セヤナーについてまったりほのぼのまとめます

「ヤァ? ウサキチー ナニタベトルンヤー?」



セヤナーは口をもぐもぐさせているウサギのウサ吉に近づいて声を掛けた。



「ナンヤコレー チョコカー? デモー クサイナー」



ウサ吉はセヤナーに食べているものを差し出した。



「ヤァ? クレルンカー? ウサキチー アリガトナー」



セヤナーはウサ吉が差し出した黒い物体を食べた。



「ヤァァァ… マズイー ケホッ ケホッ」



黒い物体を食べたセヤナーはむせ返る。



「おーセヤナー またウサ吉の近くにいたのか。ご飯の時間だぞ……って、セヤナーなにむせてんの?」



むせ返るセヤナーは涙目になりながら飼育係の伊藤の問いに答えた。



「アー イトウクーン ウサキチー チョコー クレター デモー マズイー クサイー」



「何言ってんの。 ウサ吉がチョコなんか持ってるわけ……って セヤナー、これを食べたの?」



伊藤は床に落ちてるウサ吉のフンを見て驚きながらセヤナーに尋ねた。



「ソウヤデー」



「うわぁ… セヤナー、これはウサ吉のウンチだよ」



伊藤は少し引きながらセヤナーにそう言った。



「ウンチー? ウチナー シットルデー ウンチハー タベモノヤナイデー」



排泄をしないセヤナーでもウンチの知識はあるようだった。



「ウサギは自分のウンチを食べて栄養を取ることがあるんだよ。でも流石にセヤナーには美味しくなかったみたいだね」



伊藤は笑いながらセヤナーに自分の知っている知識を話した。



「ヤァァァ… ウチハー ウンチハー クワンデー」



セヤナーは涙目になりながら食べたものを吐き出そうとしていた。



「はいはい、ほら「ぺっ」てしなさい「ぺっ」って」



伊藤はセヤナーの背中をさすりながらセヤナーに食べたものを吐き出させた。



「ほら、水も持ってきたから口をゆすぎな。 くちゅくちゅぺってしなさい」



「クチュクチュー ペー」



セヤナーは伊藤に言われたとおり口をゆすいだ。



「セヤナー、ウサ吉が優しいからってなんでも食べてるものをもらったら駄目だよ。セヤナーは給食の残りも食べられるけど、ウサ吉は食べられるものが限られてるんだから。セヤナーみたいにお腹が丈夫じゃないんだよ」









ここはとある小学校の動物飼育小屋



ここではセヤナーとウサギのウサ吉が仕切りを挟んで同じ小屋に入れられている。



ただし仕切りは天井まで届いていないのでセヤナーは仕切りを登りウサ吉のところへよく遊びに出かけていた。



ウサ吉とセヤナーはとても仲が良く、ウサ吉は自分のエサをセヤナーに譲ったりすることもあった。










「セヤカァ… ゴメンナー ウサキチー」



「?」



セヤナーはウサ吉に謝るが、ウサ吉は特に気にしていない様子だった。



「まったく… ほらセヤナー、お前のごはんもちゃんと持ってきてるから、こっちを食べな」



伊藤はセヤナーに給食の残りとセヤナーフードを渡した。



「ゴハンー♪」



セヤナーは嬉しそうに与えられた食事を食べた。









「ゴチソウサマヤデー アリガトナー」



「はい、お粗末様」



セヤナーは与えられた食事を全部たいらげた。



「アー ソウヤー イトウクーン コレー ミテー ミテー」



セヤナーは何かを思い出したようにオモチャ箱からレゴブロックを取り出した。



「ミテミテー ウチナー オウチー ツクッタデー」



セヤナーはレゴブロックで家を作ったようだった。



伊藤はセヤナーが作ったレゴブロックの家をじっと見る。



「うん、よく出来てるよ。 前よりも上手になったね、セヤナー」



そう言うと伊藤はセヤナーの頭を撫でた。



「ヤーーーデーーー!!」



褒められて頭を撫でられたセヤナーは歓喜の声を出した。









「ヤァヤァ ヒコウキー ビューン ビューン」



セヤナーは伊藤が折った紙飛行機を投げて遊んでいる。



「おっと、そろそろ昼休み終わっちゃうな。授業に出なきゃ」



飼育小屋の中で遊ぶセヤナーを見ていた伊藤は立ち上がった。



「ナァナァ イトウクーン」



「ん?なんだセヤナー」



セヤナーは教室に戻ろうとする伊藤に話し掛けた。



「ウチモー ジュギョー デテミタイー」



「ええ!? セヤナーが授業に!?」



セヤナーが授業に出てみたいと言ったので伊藤は驚いた。



「うーん、でもセヤナーが授業を聞いたって面白くないと思うよ」



セヤナーが算数や理科の授業を聞いたってちんぷんかんぷんだろうし、聞いてても面白くないだろうと伊藤は思った。



「ウーン デモー デテミタイー」



セヤナーはそれでも出てみたいとねだった。



(うーん、授業がどんなものなのか興味があるのか。一回出てみれば満足するかな?)



伊藤はそう思いセヤナーに話しかける。



「わかったよセヤナー、先生に聞いてくるから、許可が降りたら連れて行ってあげるからね」



「ワカッター」



そう言うと伊藤は職員室に向かった。







伊藤が先生にセヤナーが授業に出ることの許可を聞いてみると、あっさりOKがもらえた。



この学校はどこかセヤナーに甘いところがある。



「セヤナー、許可がおりたから授業に出ていいよ。ただし大人しくしてることが条件だから騒がしくしないでね」



「ワカッタデー」



セヤナーは一番後ろの伊藤の席のさらに1つ後ろに特別に机を構えて、机の上に座ることにした。



(今回は算数の授業だ。セヤナーが聞いてても全然わからないと思うけど眠っちゃうかな?)



そう思いながら伊藤はチラチラと後ろにいるセヤナーを見ていた。



セヤナーは黙って前を見続けている。



(あれ?つまんないから寝ちゃうかと思ったけど、案外起きてるな)



そして授業は進んでいった。













「よし、じゃあ宿題を回収するぞ。後ろから回収するように」



先生がそう言うと後ろから前の方へ宿題が回収されていく。



しかし1人だけ宿題を提出しない者がいた。



「……宿題はどうした田中」



先生は怒った様子で宿題を提出しなかった田中に問いかける。



「すいません先生、宿題忘れちゃいました。」



田中は特に悪びれる様子もなくそう答えた。





「バカもん!!!!お前は何度宿題を忘れたら気が済むんだ!!!!」





先生の怒鳴り声が教室に響き渡り、その後静寂が流れる……すると……



「ヤ……」



一番後ろにいたセヤナーが小さく声を出した。



「ヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!! コワイィィィィィィィィィィィィィ!!!!!」



セヤナーは先生の怒鳴り声に怯えて泣き出してしまった。



「ヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!! ヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」



セヤナーの泣き声だけが教室中に響き渡る。



先生も田中もばつが悪そうな顔をしていた。



「先生、僕セヤナーを連れて外に出てきます。」



伊藤は先生にそう言った。



「ああ、すまん。 頼んだぞ伊藤」



先生は申し訳なさそうに伊藤に答える。



伊藤はセヤナーを抱きかかえ頭を撫でながら教室から出ていった。








「まったく…先生もセヤナーが教室にいるタイミングで怒鳴らなくてもいいのになぁ…」



伊藤はセヤナーを撫でながらボヤく。



「よしよし、セヤナーは何も悪くないからな」



まだ泣き続けるセヤナーの頭を撫でながら伊藤はセヤナーを慰めた。



「ヤァァ……」



セヤナーは大声を出さなくなったが、涙は流したままだった。



そして伊藤は飼育小屋までたどり着き、セヤナーを飼育小屋に座らせた。



「セヤナー、少しは落ち着いた?」



伊藤はセヤナーに優しく問いかける。



「セヤナァ…」



セヤナーは元気はなかったが、もう泣くことはなかった。



「セヤナー、先生も怒りたくて怒ってるわけじゃないんだよ。田中は不真面目で宿題をサボることが多いからな。悪いことをしたら怒られるのはセヤナーもわかるだろ?」



「セヤナー」



悪いことをしたら叱られる。叱られた経験があるセヤナーもそれはわかっていた。



「サワガシクシテー ゴメンナー」



セヤナーは大声で泣いたことを謝った。



「まぁ今回はセヤナーは何も悪くないから気にするな。誰かが怒鳴り声を出したら怖いのは当たり前だからな。僕だって先生が怒鳴った時は怖かったよ」



伊藤は笑いながら話す。



「セヤカァ…」



セヤナーは元気無く答えた。すると仕切りからカリカリと何か引っ掻くような音が聞こえてきた。



「ウサ吉もきっとセヤナーが元気が無いから心配してるんだよ。ウサ吉のところに行こうか」



伊藤はセヤナーを抱きかかえウサ吉の小屋へと移動した。



「ヤー♪ ウサキチー♪」



セヤナーはウサ吉とじゃれ合っている。よかった、これなら大丈夫そうだと伊藤は思う。



「セヤナー、僕は教室に戻るから」



「ウン マタナー」



そして伊藤は教室に戻り授業を受けた。












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「ウサキチー♪ モフモフー♪ エエナー♪ アッタカイナー♪」



セヤナーはウサ吉にピッタリとくっついている。



「まったく…本当に仲が良いな」



放課後、伊藤は飼育小屋を訪れていた。



「アー イトウクーン」



伊藤を見つけたセヤナーは嬉しそうに伊藤の元に駆け寄った。



(良かった。すっかり元気になったみたいだ)



元気そうなセヤナーを見て伊藤は安心した。



「イトウクーン エホンー ヨンデー」



「はいはい」



伊藤は絵本をセヤナーに読んであげた。
















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「おっと、こんな時間か もう帰らなきゃな」



伊藤は時計を見てそう呟いた。



「イトウクーン カエルンカー?」



セヤナーは少し寂しそうに言った。



「うん、そろそろ帰るよ」



「セヤカー マター アシタナー」



セヤナーはぴょんぴょん跳ねながらそう言った。










………










僕は早く大人になりたかった。



僕の父さんは医者で、皆から「すごい」って言われる人だった。



僕から見ても父さんは立派な大人だと思う。



だから僕はいっぱい勉強して、早く父さんみたいな立派なお医者さんになりたかった。






でも…今の僕は早く大人になりたいという気持ちは薄らいでしまった。



僕が大人になるということは、僕がこの小学校を卒業してしまうということになる。



そうしたら僕はこの学校のセヤナーに簡単には会えなくなってしまう。



僕はそれが寂しくてたまらない。



以前家でセヤナーのことを父さんと母さんに話したら、父さんはうちでもセヤナーを買おうかと提案してくれた。



でも僕が好きなのは、この学校のセヤナーであって、どこかのペットショップの僕の知らないセヤナーではない。



だから父さんの提案は断った。



セヤナーに会えなくなるのは嫌だなぁ……でも……


















でも、いつかは伊藤は小学校を卒業してしまう。



他の同級生より少し大人びた賢い伊藤少年はそのことを理解していた。



伊藤は寂しい気持ちを抑え、笑顔でセヤナーに答える。



「うん、またねセヤナー また明日。 ウサ吉もまた明日な」



「マタナー!」
















「さーて、帰ったら塾で出された宿題をやらなきゃなぁ」



伊藤少年は小学6年生



彼はもう少しで卒業してしまう。



せめて自分が卒業する間まででもセヤナーを可愛がろう。



伊藤少年はそう思い、家へと向かった。

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