セヤナーについてまったりほのぼのまとめます

バイトが終わった俺が家に帰ると、テーブルの上にピンク色の人形が置いてあることに気づいた。



従姉妹が置いていったのだろうか?あの子よく俺の家に物を置き忘れるからなぁ



というかなんだこの人形



ピンク色のスライム? こんなキャラクターは見たことがないけど、最近の女子高生の間で流行ってんのかこれ?

俺がそんなことを考えながら人形を見ていると、とあることに気づく



この人形動いてないか?……そう思いながら人形を凝視していると



「ウチナー セヤナー ヤデー」



急に人形だと思っていたものが鳴いた。



「!?」



人形じゃない!? 生き物!?

人形だと思っていたそれは鳴いたと思うと机の上をウロウロと動き始めた。



こんな生き物は初めて見たぞ……とりあえず外に出すか



俺は火ばさみを持ってきて、ピンク色のスライムをつまんだ



「イタイィィィ」



火ばさみにつままれたスライムは声を上げた。



「あっ ごめん」



痛いと言われたので俺は思わず火ばさみを離してしまった。



「ん?…今『痛い』って言わなかったかこいつ…」



俺はもう一度火ばさみをスライムに近づける。



「ヤァァァ コワイー」



今度は『怖い』って言ったぞこいつ…



「お前まさか喋れるのか?」



俺はスライムに話し掛けるが…



「ヤァ?」



スライムはわからないと言うようなリアクションをしたように見えた。



「なんだ気の所為か」



俺はそう言うと火ばさみを手放す。



普段の俺なら家に生き物が侵入したら追い出すのだが、何故だかこのスライムは害のある生き物に見えなかったので放置することにした。火ばさみで掴むと嫌そうな声を上げたし、今は放置でいいだろう。



とりあえず晩ごはんにしよう。



俺はスーパーで買ってきた握り寿司詰め合わせパックの蓋を開けた。



「ゴハンー♪」



スライムは嬉しそうに寿司に近づいてくる。



それに気づいた俺はさっと寿司を持ち上げた。



「これはお前のごはんじゃないの!」



というか今度は『ごはん』って言ったよなこいつ……



寿司を取り上げられたスライムは残念そうな顔をしている



「ヤァ…」



すごいわかりやすいリアクションするな……



「なんだお前腹減ってるのか?」



俺はスライムに尋ねた。



「セヤナー」



スライムはそう返事をする。



肯定の意味だろうか…?というかこいつ俺の言葉を理解してないか?

「あぁもうわかったよ。ほら、これをやるから」



俺はサーモンの握り寿司のサーモンを取り外したシャリをスライムの前に置く。



「ヤァァ…」



スライムはどこか不満げな表情と鳴き声を見せた。



まさかこいつシャリだけ渡されたのが不満なんじゃないだろうな…



そう思った俺はシャリの上にサーモンを乗せた。



「ヤデー♪」



スライムは嬉しそうな声を上げる。



俺は再びサーモンを取り外した。



「ヤァァ…」



そうするとまたスライムは残念そうな声を上げる。



それを見た俺は再びサーモンを乗せる。



「ヤデー♪」



スライムはまたまた嬉しそうな声を上げた。



わかり易すぎるだろこいつ…



「仕方ないな、サーモンも付けてやるよ」



俺がそう言うとスライムはサーモンの握り寿司を食べ始めた。



「ウマイー ウマイー」



スライムは嬉しそうにサーモンを食べている。



これ確実に『美味い』って言ってるよな……なんなんだよこいつ



そしてスライムはサーモンの握り寿司を完食した。



「アリガトナー」



スライムは俺に対してそう言ってきた。



『アリガトナー』……『ありがとな』……お礼?

「いや!やっぱりお前喋れるだろ!」



俺は大きい声を出してスライムに問いかける。



「ヤァ?」



またスライムはわからないというリアクションを見せる。



「あぁもうなんなんだよお前!」









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とりあえずこの謎のスライムは本当に謎のままだが、何故だか追い出す気になれなかった俺は放置してレポートを始めた。



親から金を出してもらって大学に通わせてもらってるんだ。単位を落とすわけにはいかない。



一生懸命レポートを書いてる俺の前にスーパーボールがコロコロと転がってくる。



なんで俺の家にスーパーボールなんかあるんだよ…従姉妹が置いていったやつか



というか女子高生にもなってなんでスーパーボール持ってるんだよ、俺の従姉妹は精神年齢低くないか?

そんなことを考えながらスーパーボールを眺めていると、スライムの鳴き声が聞こえてきた。



「ヤデー」



スライムは何かを期待するような目でこちらを見ている。



まさかこいつがスーパーボールを俺に転がしてきたのか?

俺はスーパーボールをスライムの方に向かって転がした。



「ヤーデー!」



スライムは上手にスーパーボールを受け止める。



どこか得意げな表情を浮かべているようにも見えるな…



「ヤァ!」



スライムはまた俺にスーパーボールを転がしてきた。



スーパーボール受け止めた俺は再びスーパーボールをスライムに転がし返してやる。



「ヤデー♪ ヤデー♪」



スライムは再びスーパーボールを受け止めた。



なんだか楽しそうだな…



おっと、レポートを書かなきゃ こんなことしてる暇はないぞ。



俺は再びレポートに取り掛かる。



レポートを書く俺に再びスーパーボールが転がってきた。



スライムは期待した目で俺を見ているが俺はレポートに取り掛かったため、転がってきたスーパーボールは無視した。



「ヤー! ウチナー!」



無視されたスライムは明らかに怒っている。



「俺は忙しいんだよ。遊ぶなら一人で遊んでくれ」



俺はそういうとレポートを書き続ける。



「ヤー! ヤー!」



スライムは怒りながら俺に向かって走ってきた。



そして俺の腕に乗ってきた。



「おい!なんだよ!」



まさか腕に乗られると思ってなかった俺は焦る。



「ヤー! ヤー!」



スライムはそのまま腕から肩まで登り、そして俺の頭の上まで登っていった。



「ヤーーーーデーーーー!」



俺の頭の上に乗ったスライムは雄叫びを上げる。



「ヤデヤデヤーデ♪」



そして上機嫌に鳴き始めた。



なんなんだこの生き物…



その後もスライムは俺の頭の上で楽しそうに鳴き続けていたが、俺は無視してレポートを書き続けた。










 未知のスライムが俺の家に住みついてから2週間が経った -----








あれからこのスライムについてわかったことがある。







1つは食事について







こいつは基本的になんでも食べる。俺が食べているものになんでも興味を持って近づいてくる。



そして俺の許可なく俺が食べているものを食べようとする。なんて図々しい奴だ。



また、なんでも食べはするが、好き嫌いはあるらしい。



野菜は基本的にあまり好きではないらしい。食べながら「ウマイー ウマイー」という、このスライムだが、野菜を食べる時は「ウマイー」とは言わない。それでも食べてはいるが。



中でもピーマンは特に嫌いなようで、一度食べたら二度と食べようとはしなかった。苦いものが苦手なのだろう。



逆に甘いものを好むようで、グミやアメは「ウマイィィィ」といつもより大きなリアクションで食べている。



特にチョコレートは大好きなようで、俺がチョコの包み紙を開けた時は「チョコー! チョコー! チョコー! チョコー!」と大騒ぎしていた。なんでチョコは知っているんだこいつ…わけがわからない。



甘いものを好み、苦いものを嫌う。基本的に味覚は人間の子供に近いようだ。









もう1つわかったことは、こいつは構ってちゃんだ。








スーパーボールで遊んでいた時もそうだが、一人で遊ぼうとせずに俺に構ってもらおうとする。



また、サイコロを投げて遊んでいた時は、最初は一人でサイコロを夢中で投げて止まったサイコロの目を見て騒いでいたスライムを俺が見守る形だったが



俺が席を離れようとすると、サイコロを投げるのをやめて「ヤー! ヤー!」と大声で鳴き、ピョンピョンと跳ねる。



おそらく一人で遊んでいてても、それを見ていて欲しいのだろう。俺はこのスライムの親じゃないんだが…



そして俺が怒るスライムを無視すると、こいつは必ず俺の頭の上に登ってくる。



頭の上に乗ると機嫌は治り、上機嫌に鳴く、鳴くというか歌っているようにも聞こえるのだ。



「ヤッデ♪ ヤッデ♪ ヤーデー♪ セーイ♪ セーイ♪ セイヤー♪」



何故頭の上に乗ると機嫌が治るのかわからない、高いところが好きなのだろうか。







そしてさらにもう1つ






こいつは新たに言葉を覚える







どうしても俺の言葉を理解しているように見えるので、俺が出かける際は家を勝手に荒らされないようにいつも注意してから出かけていた。



『じゃあ俺は出かけるから、大人しくしてろよ。家の物は勝手に荒らすなよ』



『ヤデー』



まぁこんな感じでいつも注意をしていた。





しかしある日、こいつは驚くべきことを言ったのだ。



『それじゃあ出かけるから、大人しくしてるんだぞ』



『イッテラッシャーイ ヤデー』



『!?』



これには流石に驚いた。今まで『いってらっしゃい』なんてこいつから言われたことはなかったのだから。



こいつは俺と一緒にテレビを見ていることがある。



おそらくテレビを見ている間に『いってらっしゃい』の意味を覚えたのだろう。



出会った時からいくつか言葉が使えたようだが、それもどこかで覚えてきたものなのだろうか?










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「ただいまー」



バイトを終えた俺が家に帰る。



「オカエリー ヤデー」



「オカエリー ヨネー」



ん?なんか今二匹分声が聞こえなかったか…?

俺がテーブルを見ると、ピンク色のスライムがいた。まぁこいつの顔も見慣れたもんだ。



しかしそれともう1匹、今度は水色のスライムが……



「アオイー!」



「オネーチャン!」







「増えてるーーー!」









その後…優しい人間の元にスライムが居着き、居着かれた人間は幸せになるという都市伝説が生まれたらしい。

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